生年月日:1935年4月1日

出身地:和歌山県日高郡美浜町三尾

動画撮影日:2019年11月9日

動画撮影場所:三尾にあるご自宅

内容

錦濱文子さんはカナダに移民された方とのやり取りや思い出などをお話しくださいました。家族がカナダに行ったからといっても、英語ではなく三尾弁でお話しされています。カナダにいるお孫さんは、日本に来て観光をされたこともあるとお話しくださいました。また、カナダにいるお孫さんは旧三尾小学校に通われたことがあり、送られてくる手紙は日本語で書かれていました。

三尾弁

錦濱文子さんはインタビューの際に空港をエアポート、家をハウスなど英語交じりにお話しされていました。またインタビュー動画内にあるように、「カナダに行ったからと言っても三尾弁でお話ししますよ」とお話しくださっています。三尾弁とは『カナダ日系社会の文化変容「海を渡った日本の村」三世代の変遷』によると「帰加二世の言語は、幼い時からママ・パパから始まりユーやミーなど、日本語のなかに英語の単語が混ざっているという特徴的なものである。使われている日本語は三尾弁である」(1)と記載されています。

三尾小学校と教育

錦濱文子さんはインタビューでカナダ住在のお孫さんを三尾小学校に通わせたことがあるとお話しくださいました。『カナダ移住百年誌』によると「三尾小学校は明治9年開校」(2)と記載されています。戦前の日本の教育については佐藤伝、佐藤英子著作の『感謝の一生』(1980、佐藤伝)によると、「日主白従主義の教育方針というのが出ている。この主義の内容としては、日本人はカナダで何も権利を持っていない。排日問題などが起こる。永住を覚悟することが出来ない。だから日本の国民教育を施さなければならない。だが、この国は英語国だから英語をも勉強させる必要がある」()と記載されており、日系1世は子どもを日本とカナダ両方で教育を受けさせていました。また『カナダ移住百年誌』によると「移民母村三尾小学校の各学年には何名かの二世が在籍していた。クラスによっては半数近い児童が二世で占められていた」(2)とも記載されています。しかし、終戦後は「再渡加した人々も、行く時は老後はまた三尾に帰って隠居をとの気持ちを持つ者もいたが、子供の教育は日本ではと考えなかったのである。神国日本と教育されていたのが敗戦国となり、米軍を主とする進駐軍が駐留し、民主教育と民主化の旗印のもとにアメリカ化されて行く日本を見て、これからの教育はカナダでと考えたのである」(2)と記載されています。「和歌山社会経済研究所」によると「アメリカ村の学校」と呼ばれた美浜町立三尾小学校が、今年(2008)の春、132年の歴史に幕を下ろし、町立和田小学校に統合された」和歌山社会経済研究所 | レポート (wsk.or.jp)(4)と記載されています。

一番手前が錦濱文子さんの姉である田中幸子さん(次女)とご結婚された田中雅夫さんお隣が田中幸子さん(親戚との写真)

家系図

移民された方:錦濱文子さんの祖父母である浜西喜八(Kihachi Hananishi)さんと中田シゲ(Shige Nakata)さんと娘のジェンセン真理さん(Mari)

錦濱文子さんによると浜西喜八さんと中田シゲさんは1800年代末にはカナダに移民されています。錦濱文子さん以外兄弟はカナダ生まれで、長女の楠山ハルヨさんと末っ子の錦濱文子さん以外カナダ在住です。錦濱文子さんの父である田口光之助さんは1990年代(約25年前)にカナダで亡くなられ、母の上出シズエさんは日本に帰国されました。娘のジェンセン真理さん夫妻はカナダに在住しており、現在も連絡をとられています。

ディスカバー・ニッケイより錦濱文子さんの従妹であるGrace Eiko Thomsonさんについて(5)はこちら

http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2016/4/12/grace-eiko-thomson-1/

参考文献

(1)山田千香子 (2000).『カナダ日系社会の文化変容「海を渡った日本の村」三世代の変遷』御茶の水書房

(2)カナダ移住百年誌編集委員会 編(1989).『カナダ移住百年誌』美浜町カナダ移住100周年記念事業実行委員会p41.p51

(3)佐藤伝 佐藤英子(1980).『感謝の一生:カナダ日系教育私記』佐藤伝

(4)谷奈々「和歌山の「アメリカ村」とカナダ移民」和歌山社会経済研究所和歌山社会経済研究所 | レポート (wsk.or.jp) (参照:2021-1-31)

(5)ノーム・マサジ・イブキ(2016). “The Remarkable Life and Times of Grace Eiko Thomson” http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2016/4/12/grace-eiko-thomson-1/ (参照:2020-10-23)